隣のドーナツ女
隣の席の女子社員の話だけど今日お昼ご飯にUber Eats的なものを頼んでいた。
多分実際にはUber Eatsじゃなくて別の配送のやつなんだろうけどあんまり知らない。
その子はお昼ご飯にクリスピードーナツを頼んでいた。標準のシンプルな味のものを同じものを6個も頼んでいた
なんで6個も頼んだんだろうとか、そもそもなんで同じ味を6個も頼んだんだろうとか、なんでこのタイミングでドーナツなんだろうとか、なんでそもそもUber Eats的なものなんだろうとかいろんな疑問あったけど。もちろんそれは聞かずに私は極力クールに美人が言うような感じでその子に「今日のお昼はドーナツなんだ」となるべく爽やかにそしてお昼にドーナツを食べることがとても自然であるかのように雑談をしてみた。
するとその子は満面の笑みで、「そうなんですよ!今日はどうしてもクリスピードーナツが食べたかったんです」と言っていた
私は心の中で思った。そりゃそうだろうなと。クリスピードーナツがどうしても食べたいと思わない限りUber Eats的なもので頼まないし、そもそも同じ味を6個も頼まないし、何ならお昼ご飯にドーナツと言う選択肢自体いまいちよくわからないのでどうしてもクリスピードーナツが食べたかったんだろうと言うのは私の想定の範囲内の答えだった。
だけどその返答は用意していなかった。
なので私は焦った。なぜならそんなにクリスピードーナツについて語るネタがなかったからである。
なので私は極力その子に焦っているのがバレないように、自然にクールな感じで「そうだよねクリスピードーナツが食べたい時ってあるよね」と答えた。
するとその子は満面の笑みで私にそのオーソドックスなタイプのドーナツのうちの1つを「よかったらこのクリスピードーナツ食べませんか」と言ってきた。
私は焦った。
なぜなら私は今クリスピードーナツは別に食べたくないし(自称)美人がお昼にそんなハイカロリーなものは取りたくないと思っていた。
だけどそのこのクリスピードーナツへの愛を聞いた上で1人で6個食べようとしている中、そのうちの貴重な一つをくれると言っているのだ。その行為を無駄にするのもやはり憚れる。
そんな葛藤もありながらも極力その葛藤がバレないように極力冷静に私は「そうだよねクリスピードーナツ食べたいから欲しいな、ありがとう」と言った。
言った後に気付いた。多分これはばれているのではないかと。
ただその子は満面の笑みでドーナツを手渡してくれた。
私はドーナツを食べた。
事務所のデスクに2人で大量のドーナツを目の前に食べている光景が広がっていた。
私がドーナツを食べているとその子が「やっぱり頭を働かせるためには甘いものが必要ですよね」と言っていたので私もそうだよねと同意をしていた。
そんなことを思いながら私はその子のことを今度から【ドーナツの女】と呼ぼうと誓ったのであった。
私がドーナツをほぼ食べ終えようとしているときにその子は3つ目のドーナツを食べ終わろうとしていた。
もともと6個だったのであと2個あるわけだ。
どうするんだろうとずっと見ていたらその子は「さすがに飽きてきたから冷蔵庫に入れてきます」と言っていた。
そしてドーナツの女はうれしそうにドーナツを抱え冷蔵庫のある休憩室のほうに向かったのだった。
今度ドーナツの女がまたドーナツを頼んでいたら聞いてみようと思う。クリスピードーナツとミスタードーナツではどっちの方が好きなんだろうと。
ちなみに私はセブンイレブンのドーナツで構わない。